英語の洋書が読めるようになるまでの行程
英語圏の作家の新刊の小説をすらすら読めるようになる。
それが英語への情熱のとっかかりの原点で、到着点でもあります。
「英語への挫折」で書いたように、英語を完全に挫折してしまった後でも、洋書は時々購入していました。好きな作家の本、例えばポール・オースターやスティーブ・エリクソン、カズオ・イシグロといった作家の新刊です。
それは単に洋書を所有することのコレクション習性とミエもありましたが、「いつかは読む」という気持で買っていました。しかし「いつかは読む」は「今読む」にしないといけませんので、5年ほど前に発奮して、一から再勉強に取り掛かりました。
ちょうど「英語上達完全マップ」が話題になっていた頃で、それを参考にしていました。さらに、その中の英会話に当てる時間を、リーディング関連の方に時間を振り向けていきました。つまり「読むトレーニング」として「多読」と「文法学習」を積極的に取り入れた勉強方法です。
英語上達完全マップなど
英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法
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2010年から2012年まで、だいたい2年間ぐらいですが、ようやく、分からないという箇所がない状態で、いわく付きの「A Prayer for Owen Meany」を読めたので、一区切りとしました。
ずっと、ごりごり勉強していたわけでもなく、その時々のやる気によっては山あり谷ありという感じです。勉強にあてたのは会社への行き帰りと寝る前がほとんどです。2年間と書いていますが、寄り道も多かったので、文法や語彙が中学校レベル程度の基礎的な力のある人は、突き詰めれば1年かからずに読めるようになるのではないかと思います。
・初期レベル(1月~3月)
・発音をマスターする。
洋書を読むのに英語の発音はいらない、と思いそうですが、英語には独自の音のリズムがあり、それが文章の中で韻をふんでいます。英語の詩など考えてもらうとわかりやすいと思いますし、英語の曲なんかのリズムやビートがいい例です。目標の洋書を読む、というのはただ読めているだけではなく、深く小説を味わうという観点、文体の気持ちよさ、つまり頭の中で鳴る単語の音を楽しめるというのは外せないスキルです。
さらに、こちらの方がより重要ですが、発音・発声できない単語はまず覚えられないという事実があります。文字だけの単語帳でがりがり覚えられる10代とは違って、30歳超えの人には文字だけ追って、まるごと覚えていくというのは厳しい相談です。苦行になりかねないです。そういうわけで、まずはこの「英語耳」をやりました。
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最初に発音記号は全部覚えてください。後で辞書を調べるときに大いに役にたちます。ついでにこの本でRとLの関係やSの発音・リスニングなどがめっぽう鋭くなります。workとwalkなんかの紛らわしい発音の区別がつくようになります。だいたい1月の間真剣にやりました。
なお、余談ですが「英語耳」は喉の発声にいいのか、異常に歌がうまくなります。自分の声の高音のびがいままでと違うなーという実感が英語力アツプよりも先にきました。
なお、本の中の後半の歌でマスターしようみたいなところは不要です。英会話もやりたいって人は、引き続きやればよいと思いますが、洋書を読むためなら、発音関連は1冊もやれば十分です。
・基礎的な単語を覚える。
NHKの語学番組でおなじみの「大西泰斗、 ポール・マクベイ」さんの本からやりました。「でる単」とか「連単」とか単語集を買って、ちまちま全部覚えるというのが苦痛すぎるのでそれはやめて、イメージで覚えられる本にしましょう。
私はたまたま、基礎的な英単語3000語ぐらいは既に知っていたので、大西泰斗、 ポール・マクベイさんの本を数冊読んで終了です。楽でした。知らない場合は、究極の英単語 SVL Vol.1 初級の3000語ぐらいの単語は、全部知ってないと先に進めませんので、ここは頑張ってやってください。
実際に定着させるのは多読を通してですが、多少覚えておいて方が楽だと思います。
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・文法をやり直す
小説家の文章は、文法を逸脱することも多々ありますが、ほとんどの場合は読みやすく文法的にきれいな文章で書かれています。しかし、複雑な文章や省略が多い作家であれば、文法の根本が理解できていないとさっぱり読めません。ジェーム・エルロイとかですが。
多読でがんばって英語の感覚を見につけるという話もありますが、一番まずいのは、全然わかっていないのに、わかったふりして読み飛ばし続けるという読み方です。ですので文法はしっかり再勉強します。評判の良い「フォーレスト」を参考書にしていましたが、だんだん力不足感を感じてきますので、最初の基礎用だと思ってください。
フォーレスト
大西さんの本
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・英文法講義の実況中継(上・下)
洋書読み、というか英語で最重要な目の第5文型の解説と仮定法の話だけでも読むといいです。大学受験の枠を超えた名著ですね。(上・下)のほかに問題集もありますが、特にやらなくていいと思います。(※私はやりましたが、途中でダレました)
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・英文法問題集
・第2段階レベル(4月~7月)
・音読をする。
これは悩みましたが、瞬間英作文と一緒に英語完全上達マップでおすすめしていた方法です。洋書を読むにはこの2つの勉強方は必要ないんじゃないか?とも思いましたが、どうにも説得力があり、引きづられるように音読もやりました。
ちなみに、瞬間英作文もやりましたが、洋書読みにはあまり貢献していないと感じています。やってみての感想は、音読も瞬間英作文も「英会話をマスター」するには最適な方法だと思います。しかし、それに費やす時間が膨大なものになりそうだったので、この4冊だけでやめました。面白かったのとストレス発散になりましたが。リスニングの力はこれで大分ついたと思います。
音読
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瞬間英作文
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この後、悩みがふっきれてとりあえず英会話については考えないことにしました。
(※最近、英会話もやろうかという気になりつつありますが・・。)
・第3段階レベル(8月~12月目)
・多読開始
やっと読書開始です。通勤時間をほぼ犠牲にして我慢に我慢を重ねてきて、やっとここで簡単な英語で書かれた本を読み始めます。今までのおさらいで、かなり英語レベルが回復しているはずです。それでも、この段階ではまだ一般的な大人向けの小説は読めません。洋書読み仮免許です。
そもそも、ある程度英語ができる(大学に受かるレベル)のに読めないのは、単に読んでる量が圧倒的に不足しているからだと思います。洋書を読もうなんて、思ってしまう人であれば、もともと日本語の本ならかなりの読書家でしょうから、今更「I am Janet. My best friend is Kim」とかを英語で熟読とか、めんどうだ!と思ってしまうはずです。ここに、私の思う大きな壁が立ちはだかっています。結局、そういう人は、読書>英語なんです。
つまり、読書好きは、一度読んだ本や、つまらない本が大嫌いです。読みたい本は他にいくらでもあるから時間が惜しい。つまんない本を読むなら最初から「日本語」に翻訳された本を読むというパターンに陥ってしまいます。
多読の抵抗は他にもあって、学習のメインとなる語彙制限本の存在です。古今東西の名著の単語レベルを落として再編集したもので「グレートギャッビー」など多数ありますが、これが読書家の敵中の敵で、たぶん存在すら許したくないでしょう。作家が書いた言葉を勝手に変更するなんてゆるせん!というのが、本を愛する人の普通のリアクションだと思います。
しかし、もう「自分にわかるものを、たくさん読んでいく」というのが王道で唯一の方法だということをもう知っていますから。許せるものをひたすら堪えて読んでいってください。
そういうわけで、Graded Readersを読んでいきます。
>>英語多読用本 Graded Readersについて
Graded Readersは語彙制限本といって、出てくる単語の数や文章で使われている文法を制限しています。英語学習者が、辞書無しで読書を楽しめるように工夫された本です。ほとんどの本が単なる原書の抜粋とかではなく、名作や古典をリライト(書き直したもの)ものか、映画の原作を述べライズしたもの、あるいはノンフィクションや完全にオリジナルなものがあります。
原作を変えたものがどうしても嫌ならケンブリッジ イングリッシュリーダーズというオリジナルのみのGLリーダーズもあります。
最初はYL0~2という単語数もページ数も少ない本ですが、確実に退屈します。それでもきちっとやってください。思いもよらない英語の言い回しに出会うはずです。それでいて、さっさと読んで次にいきましょう。
英語の本が読めるかどうか、挫折するかどうかはこの多読にかかっていますので。
読んだ英語多読本を紹介しているページもあります。
>> 読んだ英語多読本レビュー
>> 多読については、多読とは?で詳しく解説しています。
>> 絶対に一般の作家の本しか読みたくないという場合、簡単な単語で書いている作家もいますので、こちらで紹介していきます。
・英字新聞
英字新聞を読むのも良いとおもいますが、ニューヨークタイムズなんかは難しいので、日本語も書いてあるもの、日本の話題のものがいいです。
朝日新聞など簡単な英字新聞が出ています。
・精読(長文解釈にとりかかる。)
難しい長文を読めるように長文解釈に取り掛かります。最初は受験の時に使っていた。精巧をやりました。本小さいし、字が細かいのですが、例題に出てくるの文章が実際の作家のものばかりです。例えばヘミングウェイとかオスカーワイルドとか。読書好きならそういう文字の小ささは苦にならないでしょう。さらにその後で必殺の英文解釈教室があります。
難しいので、挫折者大量発生させますが、なんとか2周してください。
・第4段階レベル(13月~15月)
・TOEIC受験
ここは余談ですが、TOEICをうけてみました。再勉強を開始してからは、TOEICは完全に無視していましたが、実力を知るために受けました。結果は800点です。良くも悪くもないという感じですが、リスニング410点 390点という得点です。どんな問題がでるのかを知るために、2冊やりました。あんまり対策していなかったにしては上等だと思ったのでそれ以来受けていません。
・翻訳解説本を読む
勉強していて、これはよかったと思えるのが翻訳用の本を読むことです。(翻訳指南書が最後の参考書)実際に英語⇔日本語を訳しているプロの方の翻訳指南の本です。単語を覚える時の重要なルールに気が付かせてくれます。
それは「辞書にのっている意味はスタートにすぎない」ということです。受動態と能動態の話や重要な話法につい、品詞の自由な転換など目からうろこ落ちまくります。
その他、エッセイなども役立ちます。
・多読&ボキャブラリー
多読・精読を始めると単語力不足に悩まされるようになります。文法もできたしリズムも取れる。しかし単語力不足は相変わらずのはずです。ショートカットするためにまとめて単語を覚えたいと思うはずです。そこはなるべく我慢して本から単語を覚えていきます。多読中は辞書を引かないのがルールなので。
ちなみに、単語のみを覚えようとして、アプリなどで覚えようとしますが。これは無駄だと思います。いわるゆボキャビルディングです。ボキャブラだけを単独でやると、速攻で忘れます。やはり文脈が大事で、私は1年間おおよそ100時間ぐらいボキャブラやりましたが、ほとんど忘れています。ある程度のレベルになるまではやらない方が無難かと思います。
単語を大量に記憶する必要性は電子辞典と英次郎の登場で以前に比べると激減していますが、覚えているのとはいちいち調べるのとでは、やはり差があります。しかしWebのおかげで重い辞書が必要なくなったので、ワンランク上の本でもなんとか読んでいけるようになりました。電車で片手で使う電子辞書と英次郎は必須です。
愛用の電子辞典、軽いです。
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パソコンには英次郎をいれてください。インターネット版もありますが速度が違いすぎます。
英辞郎 第六版(辞書データVer.128/2011年4月8日版) (<CDーROM>(Win版)(Mac版))
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・第5段階レベル(16月~18月)
・1万語到達
テストがあります。ここで何度かテストしたら1万語を楽に超えていました。既に勉強再開から1年半ぐらい経ています。この辺りになれば単語を増強してもOKです。
・第6段階レベル(19月~24月)
・一般小説に取り掛かる。
簡単で、慣れた作家の本を読む。
今の時点がここです。勉強いっさいやめましたが、かなり読むことができます。ジュンク堂などの洋書が豊富な店にいって、知らない作家でも、パラパラめくってオモシロそうな本を物色しています。挫折するきっかけになった「A Prayer for Owen Meany」にリベンジしました。
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まだ、難しい単語が出てくるリチャード・パワーズやウィリアム・トレヴァーなどの英国の小説家にはてこずりますが、ニューヨーカーに掲載されるような背景が把握できる作家の本は、だいたい読めています。