Meteor & Other 3rd オックスフォードブックワームズ レベル6 レビュー
お薦め度:★★★★★
● レベル6
● 本文102ページ
● 総語数26,380語
● 難易度目安:語数制限:2500語 TOEIC700点以上
対して期待していなかったが、不意打ちだった。GLの中でも屈指の面白さ。タイトルとレベルだけで選んだ本だったが、4つ収録された短編のすべてが面白い。それぞれ語り方も人称が違っていたり、書簡文体だったりして技巧を凝らしてある。あんまり面白いので帰宅する電車で降りる駅を乗り過ごしてしまう始末。1日であっという間に読んでしまい、いったい誰が書いたのかそこでようやく調べたら、「The Day of the Triffids」(トリフィド時代―食人植物の恐怖
)を書いたジョン・ウィンダムだった。
ジョン・ウィンダムは1903年生まれのイギリスの作家。ジョン・ベイノンまたはジョン・ベイノン・ハリスというペンネームを使っていたが、「The Day of the Triffids」あたりからジョン・ウィンダムという名前を使ってSFを発表している。この本を出したときには既に、4冊の長編を出していたが、これが処女作だとみなされていたというのが面白いところ。他にも、突然、生命の危機にさらされたり、大事故に巻き込まれて始まるのがおなじみのプロットのよう。限界の状態で人物がどう行動し思考するかがとても面白い。勘所が抜群で、着想も古びていないと思われる。The Kraken Wakes(Out of the Deeps) や呪われた村などがありますが、GLにはなっていないようです。本棚にあった「The Day of the Triffids」をもう一回読みなおそうと思うぐらいの面白さでした。
収録作について簡単に
Meteor
ある日、地球の庭に小さな隕石が落下してきた。隕石は実は宇宙船で地球への移住を試みる小さな宇宙人達が乗っていた。彼らは高度な文明を持っていたが、問題は彼らのサイズだった。不条理感が漂う。不憫な宇宙人達が人ごとのように思えなくて震えます。
Survival
「強いものが生き残る」という邦題のついた一編。火星へ向かうロケットが途中で遭難する。
中に残されたのは約10人の男と1人の女。地球からの救出ロケットが到着するまで、彼らの食料は底をつきはじめる。誰が生き残るのか。
誰が本当に強かったのかという話。
ずっとかよわい存在だった1人の女が、ある出来事から自己主張を始めるあたりから物語が加速します。想像力を刺激して非常に怖くなる作品。
頭の悪い火星人
地球人ダンカンと火星人女性レイリー。ダンカンは木星第4衛星の第2衛星にある宇宙ステーションで働くことになった。そこで働くのは一人っきりで、しかも働く期間は5年間。1人で5年間も過ごすことを恐れたダンカンは火星人であるレイリーを「購入」する。法律上は禁止されているので妻として連れて行くことになった。火星人のレイリーは無表情で英語をほとんど話さない。ダンカンは事あるごとに、レイリーに暴力を加える。やがて頭が悪いとされていたレイリーは学び始める、無表情なのはみせかけだけだった。レイリーのダンカンへの逆襲が始まる。ダンカンがかなり嫌なやつなので途中からレイリーを応援してました。まぁ自業自得という話です。
不老長寿の夢
書簡形式を取るこの話がベスト。事故にあい両足が不自由で薬に頼らないと生きていけない男が主人公。ある日目覚めるとそこは自分のいる病室ではなく、見知らぬ美しい世界だった。そして自分の足があり、回復していたが、姿はまったくの別人だった。自分の病院と別世界を行きかい、予想もつかないオチまで見事なもので引き締まっている。語彙制限をしているにも関わらずこのまま出版してもよいんじゃないかという出来栄え。必読だと思います。
敬遠されがちなSFですが、設定を利用しているだけで、多くの名作SFのように描いているのは人間の苦悩です。英語の勉強としても語りのヴァリエーションがあり、良いGLです。文句なく星5です。