Vanity Fair マクミランリーダーズ レビュー
お薦め度:★★★☆☆
● upper-intermediate
● 144ページ
● 総語数34946語
● 目安 2200語 700点~800点 準1級以上
虚栄の市という、ソドムとゴモラでも出てきそうなタイトルですが、内容は19世紀初頭のロンドン話です。
この時代は階級制度が根強く存在し、ナポレオンが全盛を誇った時代でもあります。作者はウィリアム・メイクピース・サッカレーの代表作として知られています。総話数34946語と多読用の本としてはヴォリュームがありますが、英語自体は優しく感じます。マクミランリーダーズは巻末に、解説付きの簡易単語表があるので、まったく困りませんでした。
レベッカ(ベッキー)・シャープとアミーリア・セドリという2人の女性を中心に展開していきます。原書では、副題「主人公のいない小説」(A Novel without a Hero)と名付けられているように、登場人物が入り乱れて誰が主役なのかまとまりがない事が指摘されていますが、このマクミランリーダーズ版では、うまく編集されており、2人の女性をはっきり主人公として扱っています。とはいえ、19世紀の風習がよくわからなかったり、30人ぐらいの人物が出てくるので、何度も巻頭についている人物表(顔の絵が書いてある)を見返すことになります。そういう表がある親切設計ですが、欲を言えば、もう少し人物の顔を書き分けてもらえたらありがたいです。あとかわいくないです、レベッカとアミーリアの顔が。
お話は元々お金持ちで良家のアミーリアが没落していく一方で、育ちが下等とされるベッキーがのし上がっていく様を描いています。途中ワーテルローの戦いなどがありますが、戦争についてはほとんど描かれず、ベッキーの処世術を一緒に経験していくことになります。アミーリアがかわいくて素直という設定ですが、ベッキーの方にどうしても気がひかれます。やがてベッキーも一番とされる社交界までのしあがりますが、「話が退屈で仕方ないわ、あの人たち」という辛らつな言葉をなげ、「ダンサーだった母親の方が楽しい人生だったのでは」と思うシーンが印象的でした。アミーリアは良い人ですが、この本がいまだに読まれ続けるのはベッキーのキャラクターの面白さが一番ですね。
虚栄の市は人気があるみたいで何度も映画化されています。日本では『悪女』なんてタイトルがついたことがありましたが・・・。
学習用としては、語数が多いのでお得な気持ちになれます。特に感銘は受けなかったので★3つというところです。